コラボレーションセンター活動レポート

インテレクチャル・カフェ広島(平成24年度第3回)』を開催しました!

 中国地域産学官コラボレーション会議では,平成25年1月23日(水),ひろしまハイビル21において,今年度第3回目となる『インテレクチャル・カフェ広島』を開催しました。
 インテレクチャル・カフェ広島は,大学の若手研究者と産業界・金融機関・行政等が交流し,新技術・新製品の開発や新事業を生み出すネットワークを形成することを目的とした交流会で,今年で5年目となります。今年度は,年間の共通テーマを「医療・健康関連分野」とし,8/30に開催した第1回(テーマ『新たな医療機器の開発に向けて』),12/19に開催した第2回(テーマ『福祉機器・用具の開発』)に続いて,今回,『iPS細胞等バイオ技術の実用化に向けて』をテーマに第3回を開催しました。
 コラボレーションセンターより,当日の開催概要についてご紹介いたします。

 当日は,産総研中国センターの中村所長,そして,この1月に中国経済産業局の局長に就任された若井局長の挨拶に続いて,2名の先生方から,話題提供としてそれぞれ取り組んでおられる研究の概要についてご紹介いただきました。

◆話題提供@ 「細胞に番号を付ける!?新しい細胞操作のプラットフォーム創製を目指して」
   近畿大学大学院 システム工学研究科 教授  白石 浩平 氏  (⇒「プレゼン資料@」参照)

 人の皮膚や血液等からiPS細胞を作製し,それをもとに様々な組織・臓器の細胞(目的細胞)を作製して,創薬・再生医療に利用する技術の開発が進められている。iPS細胞や目的細胞を作製する過程では,所要の性能を有する細胞(有用細胞)以外に,副産物として無用/目的外の細胞も多く作製されるため,それらを分離・除去し,有用細胞だけを非侵襲的に回収する必要がある。そのため,有用細胞の回収を高効率・低コストで行える「細胞マイクロアレイ」を活用した回収自動化装置の開発・製品化に取り組んでいる。

 「細胞マイクロアレイ」は,直径20〜50μmのスポットを100μm間隔で格子状に整列配置した基板であり,各セルの表面には,温度応答性ポリマー等による特殊な加工を施している。加熱(37℃)すると細胞が接着・固定され,セルの番地(X軸,Y軸)によって個々の細胞を区別することが可能となるため,不要な細胞の識別・除去(レーザー光照射),目的細胞を作製するために必要な遺伝子の導入等を高精度かつ効率的に行うことができる。また,冷却(25℃)すると細胞が剥離するため,有用細胞にダメージを与えることなく効率的に回収することができる。 

 細胞に遺伝子を導入する方法としては,鳥取大学の押村教授が開発された「ヒト人工染色体(HAC)」の活用に取り組んでいる。HACは,宿主遺伝子を破壊することなく独立して維持され,細胞内で一定数で安定に保持することができるため,個体レベルでの遺伝子機能の解析や,遺伝子導入により欠損した機能を補う遺伝子治療等への適用が期待できる。現在,iPS細胞へ適用して経過を観察中であり,その他の幹細胞(間葉系幹細胞等)については実験を行っている段階である。

◆話題提供A 「iPS細胞等幹細胞評価基盤技術開発に向けたアプローチ」
   産業技術総合研究所 幹細胞工学研究センター 研究チーム長  伊藤 弓弦 氏  (⇒「プレゼン資料A」参照)

 iPS細胞は心筋梗塞や糖尿病など様々な病気の治療への活用が期待されているが,人体に移植する臨床研究はまだ一例も行われおらず,実用化には至っていない。その原因としては,まず第一に,iPS細胞の作製に時間がかかることがあげられる。例えば心筋梗塞や糖尿病の場合,治療には膨大な数(10の8乗個以上)のiPS細胞が必要となり,その作製に2ヶ月以上かかる。iPS細胞を培養して目的細胞(心筋)を作製し,安全性等の試験を行う時間を加えると半年から2年程度かかると考えられており,進行の早い疾患には対応が困難である。また,iPS細胞の性質を維持しながら培養することが難しく,熟練した技術が必要になる。その他にも,iPS細胞ごとに性質の差がある,遺伝子組み換えをしている,移植後のガン化のリスクがあるなど課題は多い。

 これらの課題を解決するための取り組みとして,産総研では,川崎重工業(株),国立成育医療研究センターと共同で「自動培養装置」を開発し,世界で初めてヒトiPS細胞の自動培養に成功した。本装置は,他の細胞に分化しやすいiPS細胞を,分化させることなく安定的に長期間継続して培養することができるものであり,20継代以上の自動連続培養が可能で,未分化率は98%という高い性能を有している。また,iPS細胞の分化/未分化を識別する画像処理技術を開発・実装することによって,良質なiPS細胞のみを選択して取り出すことも可能である。

 産総研では,iPS細胞の規格化にも取り組んでいる。iPS細胞の性質・状態を見た目から判断することは大変難しい。そこで,iPS細胞のみを生きたままの状態で染色し,染まるか染まらないかで,目的細胞に安定して分化する能力を有するかどうかを識別できる技術を開発している。この技術は,iPS細胞を作製する過程でも,作製できたことの確認手段として活用できるほか,技術・経験の有無にかかわらず,誰でも同じ基準で識別できるというメリットがある。その他には,ガン化を防ぐための取り組みとして,細胞のDNAを傷つけない方法や,ガン化の危険性のあるiPS細胞を除去する方法などについても研究している。

◆交流会

 話題提供の後,中国経済連合会の山下会長の乾杯挨拶に続いて,軽食と飲み物による立食形式の交流会が行われ,近畿大学工学部(次世代基盤技術研究所)の角田所長の中締めで終了するまでの間,会場の至るところで活発な情報交換が行われていました。

 今年度の「インテレクチャル・カフェ広島」は,今回で終了となります。話題提供や交流会がきっかけとなって人的ネットワークが広がり,新製品・新事業の創出につながることを期待しております。ご参加いただいた皆様,どうもありがとうございました。 

(中国経済連合会 桑原)